南アルプスマウンテンバイク愛好会入会のすゝめ
2021.11.6こんにちは、ガイドの平馬です。
今回は、山梨県は南アルプス市にて『会員制トレイル』を運営する『南アルプスマウンテンバイク愛好会』について書いていきたいと思います。
結論から申しますと、入会しない手はない非常に魅力的なトレイルです。
こちらは、2020年10月現在においてもかなりの数のトレイル網を誇り、距離、高低差ともに日本屈指のボリュームです。
さらに今尚トレイルの拡張が続けられ、あなたがこの記事を読んでいる今現在でも、南アルプス市の山中にて代表の『弭間 亮(ハズマ リョウ)』氏と会員の方々が拡張作業を進めていることでしょう。
まさにトレイル界の『サグラダファミリア』。
ハズマ氏が熱く語る理想は、彼の生涯をかけても完成は遥か先、むしろ完成しないのがこのトレイルの魅力なのかもしれません。
そんな狂気とも言えるトレイル網も、走れなければ宝の持ち腐れ、無用の長物です。開放日のみ?ツアー限定?いえいえ。
実は、会員になれば走り放題なのです。
トレイルも『サブスク』の時代です。
肝心のトレイルの内容はこれまた秀逸。これぞトレイル、これぞマウンテンバイキングといった、トレイルフリークス垂涎の道が果てしなく続きます。
『古道』や昔の『生活道』『作業道』をベースにしたトレイルは、急傾斜・スイッチバック・タイトコーナー・ハーフパイプが盛りだくさんで、半端なスキルは通用しないほどに走りごたえ十分。
最高標高地点である1450mから始まり、様々なトレイルを組み合わせることで高低差1,000mを超えるロングライドも可能。すごいです。
実際にこのロングライドを体験しましたが、丸1日、朝から夕暮れ間近まで山の中に身を置き、走るごとに変わる気温や植生、空気感でダイレクトに『高度感』を体感できます。
このダイナミックさ、アドベンチャー感はマウンテンバイクに乗っているなら一度は体験していただきたいものです。否、味わうべきです。
こんな風に書くと、ビギナーには向いていないのか、スキルに自信が無いからまだ止めておこうなんて思う人もいるでしょう。
ご安心ください。ビギナーでも安全に走れるトレイル、そしてスキルアップのための『コース』も潤沢にございます。
ビギナーを連れて行く経験者のあなたはこちらを読んで、焦らずじっくりいきましょう。
話はそれますが、トレイルを走る上でのスキルとは何か。
賛否両論あって結構、むしろあなたの一番大事なスキルを是非教えてください。
私が考える3つのスキルを発表します。
映えある第一位は『ブレーキコントロール』です。
ここは譲れない。誰がなんと言おうと、1番大切で身につけるべきは『ブレーキコントロール』です。
『ブレーキ=止まるためのモノ』というのはビギナーが陥りやすい勘違いの最たるものです。
もちろん『停車』つまり止まるためにはブレーキを使います。
じゃあブレーキは止まるもんだろ何言ってんだと、そうなりますよね。
あまり知られていませんが、ブレーキは『アクセル』なのです。
マジで何言ってんだと、『ブレーキ』がゲシュタルト崩壊してきたわと、そうなりますよね。
では順を追って説明しますね。
ご存知の通りMTBにはエンジン、つまり動力は付いていません。
ではどうやって前に進むのか。
まず一つはペダルを漕ぐことです。
そしてもう一つ、『坂道を下る』ことです。バイクは前にどんどん進みます。
動力は『重力』でございます。
ブレーキレバーを『握る』とバイクが『減速』します。これはイメージがつきやすいですね。
『止まる』ではなく『減速』するのがポイントです。
重力により進もうとする力を減衰、押さえ込むイメージです。
減衰しきって慣性を失って初めて『停車』します。
Hの後にIが来て、Hの前にはGがあるように、『停車』の前には『減速』があるのです。失礼。
逆に、ブレーキレバーを『離す』とバイクが『加速』します。
重力により進もうとする力を解放するイメージです。
ほら、『止まる・減速する』だけでなく『加速』できましたでしょう。
これが、『ブレーキはアクセル』ということです。
またブレーキが付いているのはバイクだけ、ブレーキで止まるのはバイクだけで、人間は止まりません。
ややこしいのでなんとなーくイメージしてもらえば大丈夫です。
こちらを見て『何か』を掴みましょう。バイクと人間を切り離して考えるのがポイントです。
これ以上は長くなるのでまた別の機会に書きますが、とりあえず止まるだけがブレーキの使い方ではないことだけ覚えておいてください。
そして第二位は『視線』です。
足元の根や岩が気になるのはよーく、よーーーーく分かりますがそこはバイクを信じて任せましょう。
『視線』はバイクの舵取り。遠くに置くことでその真価を発揮します。
コーナーや傾斜を『あらかじめ』認識して体の準備をしましょう。
第三位『加重と抜重』
これは非常に奥が深いので、適度に習得しましょう。
自転車界の超人『ダニー・マッカスキル』を100%だとしたら、3%くらいの習得率でとりあえずは大丈夫でしょう。
また目安として、入会説明会の際に立ち寄る『平岡パンプトラック』で加重と抜重の習得度合いを確認してもらいましょう。
『自分には必要ない』と逃げずにしっかり取り組みましょう。私も頑張りますので。
以上の3つのスキルが身に付いていれば、南アのほぼ全てのトレイルが走行可能になるかと思います。
未修得のスキルがある場合には『Tatenuma MTB Park』にて練習しましょう。
こちらのコースは上記のスキルが無くてもとりあえず自転車に乗れれば走れます。
それほど初心者フレンドリーです。自転車に乗れない場合は別途練習してから来ましょう。
自転車に乗れさえすれば、小難しいことを考えずに山の中のオフロードを走る爽快感が味わえます。そして上記のスキル習得を意識すれば、周回して繰り返し同じところを走れるのでこの上ない練習になります。
こちらは会が本気で、MTBの普及を目指して造成中のフラット(起伏が比較的少ない平地)なエリアに人工的作られた『コース』です。
2020年10月現在は会員限定となっていますが、一般開放に向けて鋭意活動中とのこと。楽しみですね。
現在8本のバリエーションがあり、キッズバイクやストライダーでも走行可能な緩やかなコース。大人も充分に楽しむことができ、ビギナーや家族での利用が非常におすすめです。
このMTBパークを実際に見てもらうと、いかに南アルプスマウンテンバイク愛好会が『MTBの普及』を考えているかがよく分かります。
日本においてのマウンテンバイクはまだまだマイナーな遊びで『ニッチでコアな趣味』の域を出ません。
そんな日本にあるトレイル・コースの多くは『マウンテンバイカー』によって作られており、マウンテンバイカーがいかにエキサイトできるかに重点を置いて造成されている傾向にあります。
ニッチでコアな人達の欲求を満たしているだけでは永遠に『MTBの普及』はないでしょう。
では何が必要か、それは裾野を広げることです。
この『Tatenuma MTB Park』のように、自転車に乗れれば誰でも「マウンテンバイク楽しい」が味わえる場所が必要なのです。
加えて子供が走れるという点はかなり重要。子が乗れば親も乗る、親が乗っていれば子も乗りたくなる、そうして家族みんなが山に出かけるようになるのです。
そんなスーパービギナーフレンドリーなパークと、豪快な玄人向けのトレイルがひと繋ぎに同じ山に存在している点が、この南アルプスエリアの最大の魅力なのです。
このパークは是非ビギナーに走ってもらいたい。
お子さんがいらっしゃるなら是非一緒に走ってほしい。
初心者と一緒にライドする上級者は、焦らずにこのパークから一緒に始めてほしい。
そんなパークです。
走って楽しいと感じたのなら是非『ディグ』(コース整備)に参加してみましょう。
1回のディグは5回のライドに相当するほどトレイルへの関心・理解度が深まります。
・『土を削る』にはどのくらいの力が必要なのか。
・根っこはなぜ滑るのか。
・どうすればこのタイトなスイッチバックを攻略できるのか。
全てディグをすればわかるはずです。 たぶん笑
『マウンテンバイカーは金払ってでもディグしろ』
そんな諺も名言もありませんが、マウンテンバイカーならディグしましょう。
ディグをすればトレイルへの『不満』は減り、代わりに『愛』が芽生えます。
愛はビギナーを、ひいてはマウンテンバイカーを救うのです。
愛するトレイルの上では人は優しくなり、後輪のロックも減ることでしょう。
幸い、会員規則にて『年1回以上、「整備&ライド」もしくは「地域活動」に参加すること』とあるようにディグへの参加が義務付けられています。
義務、というと何だかあまりいい気はしませんが、逆にこれくらいしか縛りはないので張り切って参加しましょう。ライドと健康の向上がもれなく付いてきますのでむしろお得です。
会員の中にはMTBにはほとんど乗らず、『ディグ』と『地域活動』に積極的に参加されている方もいるとのこと。
それほど現代では、山の中で汗を流して体を動かすということに価値があるのです。
国家予算でMTBパークが作られる『MTB先進国』と比べて日本の現状を嘆き、批判するだけを仕事にしている人もいますが、
そんなネガティブな精神から楽しいものは生まれません。
日本に生まれて日本人として生きてきたことに誇りを持ちましょう。
『鎖国』によってもたらされた、1000年を超える歴史を持つ重厚なトレイルが日本にはあるのです。
個人や自治体、行政や国など、複雑に地権者が絡み合う日本の山にトレイルを作り、なおかつMTBで走るには莫大な時間と労力がかかります。
それでも会のメンバー達はそれらを顧みず、地道にコツコツと、それこそ石橋を素手で叩きながら前に進み、これほどのトレイル網を作り上げてきました。
そんな彼らが狂気のトレイル網を作り上げる最初の一歩は何だったか。
限界集落『高尾』での高尾穂見神社夜祭りのお手伝いです。
そしてこの時、会の発展・繁栄を祈るかのように、メンバーが巫女として舞いを納めたのです。
この始まりに胸が熱くなったのは私だけではないはず。
『道』とは本来、町と街を繋げ人とモノを循環させるためにあります。
彼らは山と町を繋げ、都市と地方を繋げ、お年寄りを若者を繋いだのです。
そして今、人と人を繋げようとしています。
さてさて、あっちへ行ったりこっちへ行ったりで何が言いたいのかよくわからなくなってしまいましたが、とにかくパパッと入会してこの狂気のトレイル網をサブスクで楽しみましょうってお話です。
入会金は5,000円、年会費は6,000円です。
月で割ると500円、1日あたり16円ほどでトレイル走り放題です。
入会の際には『入会説明会』に参加する必要があり、こちらの参加費が5,000円。この参加費は入会金に充当されます。
初年度の年会費は12月締めの月割りとなりますので、10月入会の場合には入会金(入会説明会参加費)の5,000円と2ヶ月×500円で合計6,000円です。
詳しくは『入会方法』をご覧ください。
SNS等では『お堅い』印象があり、正直とっつきにくそうだなと【私は】思ったり思わなかったり笑
代表のハズマ氏は実際に会うと、よく喋りよく飲む自然が大好きなナイスガイです。
トレイルや活動への熱量がオーバーヒート気味でホントによく喋るので、入会説明会はハズマ氏とのトークの合間にちょこっとライドのつもりで行ってください。
以上、『トレイル好き』は必走の会員制トレイル『南アルプスマウンテンバイク愛好会』のご紹介でした。
それでは皆様、良きMTBライフを。