TRAIL TRIP IN LADAKH 第2章〜チャンラ・パンゴン湖〜
2016.8.5皆さんご機嫌よう、平馬です。
蝉の熱心な嫁探しの雄叫びがあちこちでこだまし、嫌が応にも夏の感じさせる今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
都市圏に比べればまだまだ涼しい西伊豆ですが、さすがに夜には扇風機を『弱』から『中』時には『強』にまであげるくらいには暑くなってまいりました。
私は明け方の涼しさでお腹を壊す傾向があり、最近ではタイマーをかけて眠りにつくのですが、風が止まると寝苦しさに目を覚ましてしまいます。
熱気以外が静まり返った夏の夜に目を覚ました私は、寝ぼけながら2時間前の心配性の自分をなじるのでした。そしてその3時間後、腹痛で再び目を覚ますのでした。
さぁ、そういうわけで(どういうわけだよ)←こういったセルフツッコミってもう古いですよね?って言ってるこの矢印も古いか。
TRAIL TRIP IN LADAKH 第2章、始まります。
今回は一泊二日の日程で行きました、パンゴン湖についてです。
朝6時、前日にチャーターしておいたタクシーに荷物を詰め込み、美しく照らされる山々を見ながら優雅に出発しました。
レー市内から車で30分ほど、途中にあるティクセ・ゴンパという僧院に立ち寄りました。
ここにはゆうに100を超える人々が、僧になるため日々修行を行っているとのことでした。
修行の場と聞いて厳格な雰囲気を想像した私は、キャップなんか被ってて大丈夫だろうか、ジーパンなんか履いて行ってひっぱたかれたりしないだろうかとビクビクしておりました。
しかし中に入ると、頭を丸めえんじ色の布を纏いつつも、足元はスニーカーな少年や、何やら熱心にスマホとにらめっこしている初老の方なんかもいて安心しました。
とはいえやはり神聖な修行の場。院内にはパリッとした空気が流れ、ところどころに緊張感がただよっていました。
写真は朝のお祈りの様子。小さな子供から老人まで、幅広い年代の人たちが集まってました。
そして全員で声を合わせるわけでもなく、小さな子は自分の読めるところと、覚えたところだけを大声で呼んでいました。
それらが一つの大きな音になり、部屋の中で反響し混ざり合い、私の鼓膜を震わせる頃にはとても心地よい音になっていました。
心穏やかになった私を出迎えてくれた、この禍々しささえ覚える極彩色の、えー、コマ・・イヌ?的なものでしょうか?
剥き出しの牙といい深淵の入り口のような目といい、全くパンチが効きすぎです。
日本の狛犬たちは本塗装前の下地処理の段階で出荷されてしまったのではという懸念が頭によぎります。
写真左の、鮮やかなジャケットを着たナイスガイ。名をテンジンと言い、僕らをパンゴン湖まで送り届けてくれるドライバーです。
右の人は誰だろ、知らない人ですね。
そんなテンジンの愛車。荷物も運ぶタクシーにとって貴重なはずのトランク内に、1100Wの巨大なウーファーを搭載したロックなタクシーでした。走行中の車内は、わりと爆音で祈りの歌が流れ続けていました。いやウーファーいるんかこれ。耳にこびりつく程度に祈りを歌を聴きながら、車は山間部へ。岩剥き出しの山肌とは対照的に、谷の底はヒマラヤからの雪解け水によって緑豊かな土地が広がっていました。途中、道路脇に山からの水が流れ沢になっているところを発見。テンジンは車を降り、流れの下流で用をたすと今度は上流に向かい車内から持ってきたペットボトルに水を汲み始めました。「リアルヒマラヤウォーターだよ!はっはー!」と嬉しそうにそれをゴクゴク飲むテンジン。まだまだ山の中腹ほど。私はこの流れのさらに上流に想いを馳せましたが、リアルヒマラヤウォーターと共にそっと下流へ流しました。下流の人々に幸あれ。それ以降はほぼノンストップで走り続けました。窓の外を無情に流れ去っていく景色をなんとか記憶に留めようとシャッターを切り続けました。
そんな中の一枚。
この写真の何が良いって、単純にこの女の子が可愛いのもあるんですけど、これ車の中から撮ってるんですね。つまりこの子は向こうから走ってくる車の助手席に、何やらカメラらしきものを持ったチベタンなフェイシャルの私を見つけ、車とすれ違う刹那、決めポーズをぶっこんできたのです。目線が遅れているのはそのためです。いやはや感動しました。少女の可愛らしさや女性としての美しさではなく、ホモサピエンスとしての魅力を感じました。
そしてもう一枚、タルチョを張るおばちゃん。
タルチョとはお経が書かれた5色の旗のことで、民家の屋根の上、仏塔の周り、そして土産物屋など、街のいたるところで目にします。
こうした、祈りが日常の中に溶け込んでいる様子にもラダックの魅力を感じます。もう魅力を感じっぱなしです。
そんなこんなでレーを発ってから4時間ほど、チャンラに到着です。
このチャンラは『バイク越えできるえげつない高さの峠』として有名であり、ネット上にブログや動画等たくさん載っています。
そのためやはりバイクでの観光客が多かったです。エンジンの付いていない二輪車を興味深げに見つめる彼らもまたそんなバイカーの一人でもあります。二人だけど。
今日はたった一人の妹の結婚式。早くに両親を亡くし、半ば親のように育ててきた妹の晴れの舞台。
そんな日の前日、親友が病に倒れたとの知らせが舞い込んできた。式までに必ずは戻ると妹に約束し、私は親友のもとに向かった。
幸いにも命に別条はなく、容体の落ち着いた彼を後に妹のもとへと急ぐ。
「俺のせいで妹さんのドレス姿を見ることができなくなってしまい申し訳ない。せめてもの償いにこれを。」
何を言っているんだ、と私は声を荒げた。
私は諦めたわけではない。必ず間に合ってみせる。私が間に合わなければ、父親のいない彼女はたった一人でバージンロードを歩くことになるのだ。
そんなことには絶対にさせない。そう自分に言い聞かせ、蝶ネクタイを締めタクシーに飛び乗る。
焦る私の気持ちと反比例するように、窓の外の景色はゆっくりと流れ続けた。
なんとかここまでたどり着いたがこれまでか、と諦めかけたその時、彼が「せめてもの償いに」と渡してくれたマウンテンバイクが目に止まる。
そうか。これならば。待っていろ妹よ、私は馬よりも風よりも疾く駆け、きっと君のもとにたどり着こう!という兄の感じを狙ったんですが、どうでしょうか?
実際、下る時は車やバイクを煽りまくれるくらい早かったです。
撮影をしながら下り、雄大な山々を堪能しました。
堪能しました。
羊飼いとその仲間たちにも会いました。彼らの毛、カシミヤになるそうです。
本当は正面から撮りたかったんですが、歩くのが思いのほか早く追いつけませんでした。
その後はこんな山を飽きるほど見ました。さすが標高が高いだけあり、雲の影が近いです。
やっと到着パンゴン湖。
ここは湖の入り口ということもあり、観光客がうじゃうじゃおりました。
パンゴン湖、青かったです。
乾燥のため荒れ果てた唇のヒリヒリとした痛みに悶えながら「リップクリームを買える場所はあるか」と尋ね、
「 そ ん な も の は な い 」と一喝された私の顔より青かったです。
その後パンゴン湖の周りで撮影を行い、疲れ切った僕らを癒してくれたホームステイ先の家族との一枚。
彼らが僕らに寄っているのか、僕らが彼らに寄っているのか、ただの家族写真に見えなくもありません。
ちなみに今回訪れたメラック村は、外国人観光客が立ち入ることのできる最果ての村です。電気の存在に驚くほどの最果て感でした。
そんな村でも子供達は満ち足りた笑顔ではしゃいでいました。『足るを知る』というのはきっとこういうことなのでしょう。
そんな彼らのためになら、世界平和を本気で願ってもいいなと思いました。
一泊二日の小旅行はあっという間に終了。
嫌な顔一つせず、丁寧に優しくバイクを積み下ろし撮影に協力してくれたテンジン。
本当にありがとう。あなたは最高のドライバーであり、かけがえのない友人です。
旅の終わりに見つけたゴミ箱。
『USE ME』の文字が虚しく宙に舞います。
それでも『USE ME』
いやいや、自分もうパンパンやん。使い切られてるやん。
さて長くなってしまいましたが今回はこれにて終了です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回はレーの町でのライドの様子をお届けしたいと思います。それでは皆さん、ジュレー。