TRAIL TRIP IN CAUCASUS〜旅の終わり?〜
2017.12.6おはようございます。平馬です。
清々しい朝を迎えました。
前日の峠越えの疲れはほとんど無く、むしろこれからの緩やかな下りトレイル、そして首都トビリシに戻りワインとステーキとチーズを食すことへのワクワクで満ちておりました。
テントやバイクに霜が降りていたり、ペットボトルの飲み口が凍ったりしていましたが元気一杯でした。
BOSSは着替えを入れていた『RawLow Mountain Works』よりサポートいただいた『Bike’n Hike Bag』をバッグオンバッグスタイルに切り替え意気揚々と走り出しました。
出だしは岩の多い川沿いの道からでした。
爽快感溢れるライドを期待していましたが、ウォーミングアップなしに走り出し怪我をしては元も子もありません。もはや体に染み付いた『押し』のスタイルでご機嫌なトレイルを目指します。
この時、川沿いに降りるということが何を意味するのか、僕にはまだ分かりませんでした。
羊の毛がり後を横目に、依然バイクにまたがることなく時間は流れました。体も温まり、準備万端いつでも走れるぜ!という状態がしばらく続きました。
谷の底にいた僕らの前に現れたのは、山肌を這い上がるように貫くトレイルでした。
なるほど、さすがヨーロッパ最後の秘境と言われるだけあり一筋縄ではいきません。
「ジョージアめっちゃ焦らすやん」と思いながらバイクを押し上げます。
息を切らしながら登りきり「さぁジョージア、そろそろいいだろ?」と顔を上げればそこには念願の下りトレイルがありました。
Fine
がしかし、急すぎ狭すぎでとてもバイクに乗って降りられず、再び「ジョージアめっちゃ焦らすやん」と先ほどより強めに思いながら一歩一歩慎重に下りました。
D.S.
何度目かの谷を越え、山々の雄大さに少し嫌気がさしてきた頃、閉鎖されたキャンプサイトが見えました。シーズンを終え、冬眠にでも入るかのようにひっそりとした建物には、デカデカと『BATH』の文字が。そういえばもう三日間風呂に入ってません。
その後は、わずか15cmほどの激狭トレイルを歩き、
なんでここが正規のルートやねんという、踏み外せば川にドボンな岩の上を歩きました。
気持ちのいい、爽快感溢れるトレイルとは何だったのか。しかしこれはこれで楽しかったのです。
それでも体力は確実に消耗していき、買いすぎかな?と思われた行動食は底を尽きかけていました。
そんな時、キムラ氏が持たせてくれた『Trail Butter』が僕らにPOWERを与えてくれました。
その後、次第に人の気配が増し道も広くなだらかになってきました。そして目の前に広がる緩やかな草原、もうどこでも走り放題!そうそうこれこれ、よっ!待ってましたと走り出し、ずいぶん久しぶりに全身に風を感じました。
ゴォーーーという風切音に紛れて犬の鳴き声が聞こえました。一匹ではなく数匹いるようでした。
遠くから三頭の牧羊犬の姿を確認し、BOSS以外の生き物に遭遇するのもしばらくだった僕はちょっと嬉しくなりました。
しかし、彼らは僕らを敵とみなしたようで歯茎までむき出しにして低いうなり声をあげて向かって来ました。
走る緊張。BOSSが口を開きます。「奴らは車輪の音に反応する、降りよう」そしておもむろに拳大の石を拾いあげました。かつて彼から聞いた南米での体験談を思い出し、僕も慌てて石を探しました。手にしたのは、何を思ったか薄く小さな石。「手裏剣かよ」と自分にツッコミつつ三頭の中を進みました。
すると一頭がBOSSに向かってきました。彼が手にした石を地面に叩きつけると、ボコッという音とともに犬は逃げていきました。
なるほどね、向かってきたらあぁすればいいのか、と思った矢先僕の元にも一頭の牧羊犬が向かってきました。
BOSSに習い石を投げる僕、しかしそれは手裏剣サイズ! ペッ‥と情けない音を立てて転がる小石をもろともせずにじり寄ってくる犬。「大丈夫、敵じゃないよ」と語りかけましたがそもそも英語も通じないこの国で日本語なんて、、いや!大事なのは気持ちよ気持ち!と懸命に語りかけながら進み続けると、彼はスーッと離れていきました。
マジか、やっぱ気持ちって通じるんだと感動しながら振り返るとそこには怪我を負った羊が一頭。
彼らは羊を守っていたようで、離れていったのは守備範囲から敵が離脱したといういたって事務的な理由だったようでした。
自分の中にナウシカ的な才能を感じましたが気のせいでした。
危機を脱した僕らは、走って押して休んで押してを繰り返し、ヘドロに足首までつかったりながらもGirevi(ギレビ)という村に到着しました。
時刻は4時を回り、重い雲はパラパラと雨を降らせ始めました。
どうやら今日はここで一泊することになりそうです。
オフシーズンで不気味なほど人気のない村に入り、かろうじて空いていた宿に飛び込むと一気に雨足が強まりました。
屋根、壁、そしてなによりビールがある幸せを噛み締めながら降りしきる雨を見つめていました。
まだ小さいハスキー犬のお出迎えにご満悦のBOSS。
この宿のお値段は一泊二食で50ラリ。この立地でオフシーズンであることを考えるとかなり安く感じました。
つい2日前まで新品同様だったバイクもこの通り。
そして何とWi-Fiが使用可能でした。宇宙(そら)からダイレクトに受信するタイプでしたが回線速度は良好、久しぶりに聞くメールの着信音、予約メール。よく見れば帰国直後の日付で慌てて返信するも厚い雲に遮られ日本には届きませんでした。
2本目のビールを飲み終え夕食をとるとあたりはすっかり暗く、雨足はさっきより幾分弱くなったようでした。
停電により薄暗くなった室内で眠気が加速した僕は一足先に休むことに。ふかふかのベッドはやはり幸せです。
おやすみなさい。
おはようございます。
雨は夜更け過ぎに雪へと変わったのでしょう。
まさかの一面雪景色です。やっとの思いで越えて来た峠より積もってます。ということはあと1日ズレていれば、目標の峠を目の前におめおめと引き返すことになっていたでしょう。
ひとまず朝食をとり、
ハスキーと戯れ、
お茶をいただいて決めました。
『以上を持ってTRAIL TRIPを終了とします、お疲れ様でした!』
雪の中、ひたすらダブルトラックを進むよりも早めに首都に戻り他に行きたかった場所に行く方が賢明という判断でした。
幸い村のおっちゃんが終点の村Omalo(オマロ)まで連れていってくれるとのこと。それならばと、トビリシに戻ってから行く予定だったワイナリーに連れていってくれないかと尋ねるもあまり通じず、自家製ワインが出て来ました。やはり英語は無理か、と白ワインを飲みながら再度チャレンジ、今度は赤ワインが出て来ました。最高だなこの宿。
時刻は9時前、両手にワインを持ちロゼ状態のままゆったりと過ごしました。
唐突におっちゃんから声がかかり、荷物をまとめて出発です。
日本が誇るTOYOTAの、おっちゃんが愛したランクルに乗り込み村を後にします。
ありがとうGirevi、さようならGirevi。
おっちゃんはその大きな手でハンドルを握り、ランクルは力強く山道を進みます。
川を渡り峠を一つ越え、送ってもらえて良かったなと思いながら流れる景色を見ていました。
車に揺られること二時間弱、終点の村オマロに到着しました。
トレッキングの起点となるだけあり数多くのゲストハウスが並ぶこの村も、閑散としていてすっかりオフシーズン。
おっちゃんに案内され向かった二階建てのゲストハウス、宿泊客は僕らだけでした。
左は宿の女将のエト。春から夏にかけてはこの宿を営み、冬が来るとトビリシの土産物屋で働くと言っていました。
ここには豊富な品揃えを誇る売店もあり、お菓子や日用品、土産物も充実しておりました。
彼女は英語も通じ、あれこれと商品を説明してくれました。
自家製だという赤ワインを買い、サービスでくれたパルメザンチーズをかじりながら再び乾杯。
今日は時間も遅くトビリシ行きのタクシーは出ていないそうなのでここで一泊することに。
お客がいなければ彼女も暇なのでしょう。娘だ、と言って写真を見せてくれました。
名前はインガ、めっちゃ美人。インスタだしいいね!たくさんついてるしエトもいいね!してるしで色々言いたいことがありましたがそれはさておき美人。
そしてエト。確かにそっくり。そしてこう見えて46歳!!トビリシに帰ったら美容院とエステとネイルに行くんだと笑顔で話していました。
話は盛り上がり再びインガの話に。聞けば歌を歌っているらしく、是非!と聞かせてもらいました。
これがまたいい歌でBOSSは一耳惚れ。エトからインガに電話してもらい「ぜひ僕らのムービーにこの歌を使わせてくれ」と頼みました。
二つ返事でOKをもらってこの旅の主題歌をゲットしました。その歌を使ったムビーがこちら。
素敵な出会いもあり、夜には2本目のワインを買い足し豪華な夕食。水餃子のような小籠包のような名物『ヒンカリ』も食べ、これまた名物の透明な蒸留酒『チャチャ』を煽り、3本目の赤ワインとエトオススメの白ワインをいただき、締めはマウンテンフラワーのお茶を飲みました。
TRAIL TRIP IN CAUCASUSを締めくくる最高の夜でした!お休みなさい。
おはようございます。
一夜明けトビリシに向け出発の朝です。
ん?昨日より雪増えてない?
‥続く?