TRAIL TRIP IN CAUCASUS〜峠越え〜
2017.11.22おはようございます、平馬です。
夜明けとともに早速出発です。前日のハードな押し上げによって体だが悲鳴をあげている!!と思いきやすこぶる快調です。
高山病の気配もなく、スムーズにテント周りを片付け、自転車を右に携え歩き出しました。
今日は『キャンプ地』から『Atsunta Pass』を目指します。一日目の行程に比べ、距離だけ見れば半分以下、体も軽くなんだかあっさりクリアできてしまいそうな気がしました。
キャンプ地から先は木々がなくなり草原が続きます。
この時の食事はアルファ米と行動食のみ。一日分足しても1000〜1500kcalほどなのに対して消費カロリーはざっと3000〜4000kcal。
西伊豆で蓄えた備蓄分がゴリゴリ消費され顔がみるみる尖っていきました。
水の確保にはmont-bellの『UL.ウォーターピュリファイヤーボトル』を使用しました。
前回のラダック遠征で最後の最後にしくじり、帰国後二人揃って点滴を打つハメになったので水の管理は慎重です。
なるべく荷物を軽くするため、必要最低限をペットボトルに移して持っていきました。
大きすぎる山々に圧倒されながら歩を進めます。
この辺りから頭上の雲が厚みを増し、重くのしかかってきました。雨でも降りそうです。
それでも道の傾斜はなだらかで、時にはバイクに跨りながら順調に進みました。
しかしながら目指す峠は遠く雲の中。雨は避けられぬと感じると同時に、ズボンの下にはくタイツを忘れたことを思い出しました。
アルファ米で昼食をとり一歩一歩ですが確実に標高が上がっていきます。
相変わらず目的の峠は雲に隠れたまま。あと何歩進めば、あと何メートル標高が上がれば目的地なのか、分からないまま時は流れました。
進んでいくにつれ、尾根の上にあった道は山の斜面へ、足元の草は青々とした色に変わっていました。
同時に道幅も狭くなり、人とバイクが並ぶのが精一杯でした。
そして案の定降り出した雨。僕はここぞとばかりにポンチョを取り出しました。
どうゆうつもりなのか、ニットキャップonフードonヘルメットonポンチョという全くもって意味不明なレイヤーに虚ろな目。当時の僕は一体何を考えていたのでしょう。
一緒にいたBOSSからは「こいつGORE-TEXをなんだと思ってるんだろう」と思ったと後日談をいただきました。
その後はゆるゆると下りだし、せっかく登ったのになんで下るんよ!と心が曇りかけた時、反比例して空が明るくなり始めました。
灰色の雲からは真っ白な雪が顔を出し、いよいよゴールが見えてきました。
ゴールがどこかお分かりでしょうか?わかんないですよね?
ここです。
まるで魔王の城に挑むがごとき緊張感。挑んだことないけど。
しかしながら、ゴールが目視できただけでも気持ちに少し余裕が出てきました。
近づいて見てようやくわかる山の大きさにビビりましたが確実に距離は縮まっていきます。
現在地はマップ上でいうとこの辺り。前回同様西伊豆にいた時から分かっていた急斜面が現れます。
もうこんなんですよ。さらに標高は3000mオーヴァー、10歩進んで一休みの繰り返しです。
途中、BOSSは前輪だけ外してみたり、両方外してバックパックにくくりつけてみたりと様々なスタイルチェンジを試みてましたが、どれもしっくりこないらしく10分後には元の姿に戻ってました。
ゴールがもういよいよ目と鼻の先に見えてきた頃には、左足で路面の雪を爪先で掘って踏ん張り右足を前へ、同様に掘って踏ん張りバイクをぐいっと前へ、リアブレーキをかけて再び左足で雪掘りの繰り返しでした。
うっかり足を滑らせれば100m以上の滑落必須な緊張した状態に置かれた僕は、頂上に想いを馳せました。
あそこには何があるのだろう?あの二本の柱は一体なんだろう?電線?いや、アンテナ、そうアンテナだ!きっとWi-Fiのアンテナだ!きっと頂上に着いたら『Atsunta pass』ってWi-Fiが飛んでて、接続しようとするもパスワードを要求され、少し悩んで標高か!と閃き『3431』と入力するも「パスワードが違います」うーんと唸って再びひらめく、そうかフィートか!と。『11256』と入力すると「接続完了」の文字が!そしたらこうして、、、
ま、もちろんWi-Fiなど飛んているわけもなく、そもそもTwitterもやっていないのでできるはずもなく。
妄想の世界へ逃避気味でしたが、足元のタイヤのちぐはぐな雪化粧を見て現実に戻りました。
西伊豆ではまずありえない状態に非日常感を取り戻し、俄然やる気が湧いてきました。
進んできた道を振り返りラストスパートです。
一休みを要する歩数は10歩から2歩に減り、強風が吹き始めました。
ゴールまでの距離も高さも両手の指で数えられるほどに。
そして、ついに!
ゴーーール! って言っても本当に何もありませんでした。
それもそのはず。この峠は、僕らが勝手に目標にしていただけで実際は単なる地形の一部。地球規模で見れば表面のちょっとした凸凹に過ぎません。
大きすぎる自然の中にいる小さな自分を思い知らされると同時に『一は全、全は一』という言葉を用いれば、自分の中にもこんなにも巨大な世界が内包されているのか、、なんてことを考えてました。
とはいえここまで登ってきた達成感はひとしおで、成し遂げた!という気持ちの高ぶりを今でも覚えています。
頂上には、トレッキングマークのついたポールに枝を縛り付けた十字架がありました。
木が生えているのは1000m以上下のエリア、そこから誰かが持ってきたのでしょう。久しぶりに人の気配を感じました。
さぁここからは下りです!ずっと押してばかりで跨ることのなかったバイクに2日ぶりにペダルをつけます。
峠付近のトレイル。幅は狭く慣れない雪の上で少々不安でしたが初めてのトレイルはやはり楽しかったです。
テンションも上がります。
トラバースやつづら折れ、タイトなスイッチバックを走り抜け、気づけば雪も消え懐かしい草原が広がります。
この日のキャンプ地は赤い丸のあたり。
すぐ近くに見えますが、この位置から下りで一時間以上、峠からは一時間半以上かかりました。
今回の旅で僕らの足元を支えてくれたのは『株式会社キャラバン』様よりサポートいただいた、5.10『GUIDE TENNIE』です。
歩く、漕ぐ、下るをバランスよくカバーできるシューズです。たった2日ですが、峠を越えてかなりいい味が出てます。
時刻はすでに4時過ぎ。テントを張り夕食を済ませる頃にはあたりは暗くなり始めました。
明日からはゆるーくながーく下っていけるという喜びを感じながら目を閉じると、次の瞬間朝になっていました。
おはようございます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回はきっと楽しいトレイルライドレポートとなることでしょう。
それでは。